2010年定時制高校の弁論大会 小林空雅

 

「個性を生かす1」

みなさんは、個性をどのように考えていますか。
ファッションや食べ物の好み、性格や体格、恋人や友達の対象、
他にも様々なことが個性といえるでしょう。
言い方は悪いかもしれませんが、私は「障害」も個性のひとつだと考えています。

私は男ですが、体のつくりは女性として産まれてきました
性同一性障害といい、本当の性別と体の性別が異なり、違和感をおぼえるものです。

車椅子、人工呼吸器などの器具で補うこともできず、眠っている間さえも
自分の性別と異なる性の体と生活しているという違和感から逃れられません。

このような障害の苦しみは、本人以外の誰にもわかりません。

同じように、一人一人の悩みも苦しみも、完全に理解することはできないと思います
人間は一人一人、似ているところがあっても違う思考を持っているからです

ですが、どのように辛いのか苦しいのかはわからなくても
「とても苦しんでいるんだ」ということは頭で理解することができます。
それをどのように感じるかもまた、個性だと思います。

私は川崎高校に入学し、素晴らしい友達や先生方に恵まれました。
先生方は入学前からサポートして下さって、学校に通いやすくしてくれました。
クラス以外の友達には、校内の生活体験発表会でカミングアウトをしたのですが、
以前と変わることなく接してくれています。

自分がコンプレックスだと思うことは、他の人からすれば気にとめることもないのかもしれません。
自分がいやだなぁと思うことには変わりありませんが、
友達や先生に「それがあなたの個性だ」と言われると少し軽くなりませんか?

先生方や友達のおかげで、私は特別辛い想いをすることなく、学校生活を送れています。
仲良く話す友達もでき、今では学校に通う事も
生活の中の一つの楽しみになっていると感じるほどです。
私は絵を描くのが好きなので、イラスト研究部に入部し、
そこでも楽しく活動させてもらっています。
どこにいても私はありのまま、個性を発揮して過ごしていると思います

つづく「個性を生かす2」へ

 

2010年に行われた、川崎市内定時制高校の弁論大会。
空雅は、3番目の弁士としてして、壇上にあがりました。
彼の、言葉の中には、人としてとても大切な考え方がちりばめられていました。

一人一人の悩みも苦しみも、完全に理解することはできないと思います
人間は一人一人、似ているところがあっても違う思考を持っているからです。』

「わかる、わかる、そうだよね〜」とか
「そうじゃないでしょう。それは違うよ・・・」とか。
「そういう場合はね、こうした方がいいよ」とか。
人の痛みをわかっているつもりになって、自分の価値観で、
判断をしたり、アドバイスをしがちですが、
みんなそれぞれ、痛みの感じ方は違うことを忘れないでください。

そして、何よりも大切なのは、次の部分です。

ですが、どのように辛いのか苦しいのかはわからなくても
「とても苦しんでいるんだ」ということは頭で理解することができます。
それをどのように感じるかもまた、個性だと思います。

何を悩んでいるのか、苦しんでいるのか、どれほどの苦しみや痛みなのか、
それは、到底知ることはできませんが、目の前にいるその人が、辛い思いをしていることは、
きっとあなたにも、届いているはずです。その感じ方は、人それぞれですが。

取材の際にいつも聞かれることがあります。
「お子さんが、性同一性障害だということを、よく、受け入れられましたね」

空雅の親として、私が目を向けていたのは、性同一性障害そのものではありませんでした。
その事で、学校に行けなくなったり、笑顔が曇ってきたりした空雅自身に目を向けたのです。
性同一性障害である事実を変えることはできません。性同一性障害には、太刀打ちできません。

けれど、笑顔を曇らせている空雅の苦しみを取り除く方法が、きっとあると信じていました。
それが、男子として生きる事を応援することだったのです。
その結果が、取材のときの質問の答えにつながるのだと思います。
受け入れたというおおげさなものではなく、最初からそうだったという感覚です。

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